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講談社現代新書
新版 卑弥呼の謎

新版 卑弥呼の謎

古代史研究のパラダイム変革を求め、
数理文献学に基づいたユニークな方法論で邪馬台国の謎に挑戦。

卑弥呼=天照大御神
邪馬台国=高天の原=北九州

という大胆な仮説で邪馬台国論争に一石を投ずる。


 本書「はじめに」より

  1

この本の旧版の『卑弥呼の謎』が刊行されたのは、昭和47年のことであった。

当時は、井上光貞の『日本の歴史1 神話から歴史へ』(中央公論社刊)や、宮崎康平の『まぼ ろしの邪馬台国』(講談社刊)などが、大ベストセラーになっていたころであった。

古代史ブームのまっただ中で刊行されたためか、幸い旧版の『卑弥呼の謎』も、多くの読者 を獲得できた。

十万部以上の発行部数をみ、私の30冊ほどの著書のなかでは、もっとも広く読まれたもの となった。

しかし、初版の刊行以来、15年余の歳月を経、いくつかの表現は、古びてきた。

その後、古代史関係の多くの本が刊行された。考古学的な発見もあった。私自身の探究も進 んだ。

この本は、古代史についての、私の考え方の基礎を示したものである。

考え方の基本は、旧版をだしたころと変わらないので、とくに、この本の前半は、旧版と、 それほど大きくは変わらない。古びた語句をあらため、新たな資料をおぎない、多少の手なお しをしたにとどまる。

しかし、後半は、旧版と、かなり異なる。

旧版では、卑弥呼を、崇神天皇のころに活躍したとされる倭迹迹日百襲姫(やまとととひものそひめ)にあてる見解にた いする批判に、かなりなぺージを費やしている。当時は、「卑弥呼=倭迹迹日百襲姫」説をとる 人が、すくなくなかったからである。

現在では、状況がちがってきている。

そこで、「卑弥呼=倭迹迹日百襲姫」説批判にあてていたぺージを、大幅にけずった。 そして、かわりに、現在でも、きわめてさかんな「古代の諸天皇非実在説」の検討に、かな りなぺージをあてた。

「古代の諸天皇非実在説」が、実証的、論理的な根拠を、ほとんどもっていないこと、逆に、 古代の諸天皇の実在を示す、実証的、積極的根拠を、すくなからずあげうることを述べた。 私は、現在の、「古代の諸天皇非実在説」などにもとづく「通説的見解」の、論理的な基盤は、 抜本的に再検討される必要があると考えている。

この新版では、私の考え方の基本的な骨ぐみが、読者に、旧版よりもはっきりとつかんでい ただけるものとなるよう努力したつもりである。

ひとつの立場に立つものであるが、謎多い古代について考えるさいの、参考となるところが あれば幸いである。

なお、故人となった方の敬称は、省略させていただいた。   

昭和63年6月



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