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最新「邪馬台国」論争 |
邪馬台国は、九州か!大和か! 卑弥呼は、だれか! 最新情報を多面的に分析。 歴史の真実に迫る。 |
1996年7月19日(金)の『朝日新聞・朝刊の「川柳欄」に、次のような川柳がのつて いた。 「出土する度に邪馬台国移動」(佐藤たかし) たしかに、最近のテレビ・新聞などの報道をみると、なにか出土があるたびに、邪馬台国の あった場所の候補地が、九州になったり、畿内になったり、移動しているようにみえる。 報道する側には無意識のうちに、視聴率をたかめたい、世間の耳目を集めたい、という気持 ちがはたらく。そのため、直接的には、邪馬台国と結びつかないと思われる出土物さえ、邪馬 台国と結びつけられて、大きく報遣される。 3年前、10前に発見された重要度100点満点で、70点、80点に達する事例(福岡県 前原市の平原遺跡、佐賀県の吉野ヶ里遺跡、福岡県の平塚川添遺跡など)は、どんどん印象が うすくなる。 最近発見の重要度20点、30点ていどの事例が、大々的に報道され、強く印象 づけられる。 しかし、邪馬台国のあった場所を、本気でさぐろうと思うならぱ、これまでの出土物をトー タルに見て、今回の出土物はトータルのなかで、どのていどの重要性をもつのかを判断しなけ ればならない。 一打逆転満塁ホーマー的新発見が、そうやたらにあるわけではないのだ。 「トータルのなかでの、最新の情報の検討」が、この本を書く、ひとつの重要な目的である。 毛沢東は、かつて述べた。 揚子江は、あるところでは北に流れ、あるところでは南に流れ、あるところでは西にすら流れている。 しかし、大きくみると、かならず西から東へ流れている、 と。 そのとき、そのときの報道にふりまわされていると、ある岸辺に立って、「揚子江は、ここで は、西に流れている」「ここでは、北に流れている」などと、個々の事例をそのまま報道してい るのと変わりがないことになる。 アインシュタインは述べている。 「現実から遠ざかって、高い山に登って、はじめて正しい進路を見定めることができる。目の 前の問題にふりまわされているだけでは、真の進歩はありえない」 最近の新聞、テレビの古代史関係報道をみると、邪馬台国大和説へと大和説へと草木もなび いているかのような感じさえある。 この本は、狂瀾(きょうらん)を既倒(きとう)にめぐらそうとして書いたものではない。 崩れようとする九州説の大廈(大きい建物)を、片手でささえようとして書いたものではない。 九州説には、なお、そうとうな根拠がある。 強く主張される大和説の根拠には、疑問をはさむ余地も大きい。 マスコミの報道は、事実を材料とし、センセーショナリズムの味付けがほどこされている。 断片的であったり、アバウトであったり、ムードやイメージに流されやすかったりする。 この本は、最近の発掘ニュースなどを整理検討し、邪馬台国やわが国の古代史について、現 在なにがいえるのかを考えてみた。読者が、古代について考える材料となれば、幸いである。 |
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