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佐原先生と安本先生との討論のようす >>

第198回 特別講演会

特別講師 佐原 眞先生


 佐原 眞先生講演 

■考古学と年代

遺物から絶対年代を決めるのは困難な場合があるが、相対年代は決めやすい。
19世紀には、時代の前後関係(相対年代)だけを明らかにすることがおこなわれて いた。

相対年代を決める方法
  • 層位学
    19世紀前半ウイリアム・スミスが確立した考古学的年代推定方法で、遺物が含まれる地層の上下関係で相対年代を決める。
    このように地層の順番を研究する学問を層序学、あるいは層位学という。
    地域が異なっていても同じ化石が発見されれば、その層は同じ年代だと見なす。

    1861年フランスのエドワール・ラルテが磨製の石斧の発掘でこの手法を使用。

  • 型式学
    機能が、時間経過とともに形式化したり、さらには痕跡しか残らなくなることがある。物の機能の変化を見て、時間の前後関係を判断する方法。

    たとえば、背広の襟。ほんらい「詰め襟」であったものが、形式化して、「詰め襟」を開いた形になった。通常の背広の襟は、「詰め襟」の原型を想定できるが、芸能人が着るような極端に大きな襟はかざりに近くなっているのでさらに新しいかたちと考える。

  • 一括遺物
    同時に置いたと判断される状況で出土するひとまとまりの遺物。
    甕棺や、竪穴式石室からの遺物は、一括遺物と判断(蓋を閉めてしまうので一回かぎり)。
    横穴式石室の遺品は、後から埋葬したものが加わっている可能性があるので、一括遺物とは考えない。

    また、複数の遺物がいっしょに見つかるケースが何回あるかを吟味。層位がずれて発掘されたり、単なる偶然の可能性もあり、1回では疑問。30回一緒に出たら一括遺物とみてよい。




内野会長が佐原先生を紹介



歴史博物館長時代の思い出



考古学の年代について



特製壁紙(?)の前で熱弁

 安本美典先生講演 

■国内最古の馬具出土 (平成13年12月1日の新聞各紙による)

奈良県桜井市の箸墓古墳の周壕跡から、乗馬の際に足をかける馬具、木製の輪鐙(わあぶみ)が見つかった。

桜井市教委は「輪鐙は4世紀初めに周壕に投棄されたと推定され、国内最古の馬具である可能性が高い」と発表した。

講演中の安本先生
■これについての安本先生の見解

年代の根拠は、輪鐙と一緒に、大量に出土した布留1式の土器を、4世紀はじめの土器としたことによる。

しかし、布留1式の土器の年代については、学者によって4世紀はじめから、4世紀後半まで、見解にばらつきがある。
布留1式の土器と馬具が同時に出土した場合に、馬具の使用時期を4世紀はじめに持っていくよりも、布留1式土器の年代を4世紀後半とするほうが、無理が少ない。

理由
  • 過去に出土した馬や馬具の遺物との連続性
    これまで、馬具や馬の埴輪などの出土は5世紀以降の古墳から出土している。新たに出土した馬具を、4世紀後半に置くほうが連続性がある。

  • 古墳の形の分析から、箸墓古墳は4世紀後半型である。
    その周壕から出土した馬具も、4世紀後半以降のものと考えるのが自然。

  • 伝承との整合性
    日本書紀によると、箸墓の被葬者は、祟神天皇の時代の倭迹迹日百襲姫であるという。 祟神天皇は、「古代天皇一代10年説」によると350年ごろ活躍した天皇である。 したがって、箸墓古墳も4世紀後半の築造と考えるほうが自然であり、馬具も4世紀後半以降に捨てられたものであろう。
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