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日本民族の誕生 |
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縄文中期、西日本は火山の大爆発で壊滅した。その後、極東アジアの古代文化と長江旧域の文化が融合し、日本民族が生まれた。 |
本書「はじめに」より 「日本人」と「日本民族」の違い ![]() |
世界の言語人口を見ると、日本語を使用する人口は、世界で、第六位にあたる。世界のなかの、六言語のうちにはいる。ただ、日本語は日本列島以外では、ほとんど話されない。 この大言語の日本語を用いる日本民族の文化や言語は、どこから来たのだろう。 この本は、「日本民族の起源」の本であって、「日本人の起源」の本ではない。 「日本人の起源」関係では、遺伝人類学関係の本が、多数刊行されている。 遺伝人類学は、日本人の起源について、多くの有益な情報をもたらした。 しかし、結局は、「日本列島には、アムール川流域→北海道からの南下などの北から、あるいは、朝鮮半島→九州からの北上や、東南アジア経由の南からなど、人々が流れこんできて、日本人を形成しました。」というような結論をもたらす形になっている。 もちろん、その結論は誤りではない。しかし、それらの人々が列島に来た年代などが、すこし漠然としている。 例をあげてみよう。 今から、2000年ぐらいの時間が経過したのちに、北アメリカに住んでいる人々について、遺伝人類学的な調査を行なったとしよう。 結局は、「北アメリカには、ヨーロッパからも、アジアからも、アフリカからも、多くの人々が流れこんできて、もとからの土着の人々とも混ざって、北アメリカ人を形成しました。」ということになるであろう。 しかし、そのころでも、おそらく北アメリカでは、英語の子孫語が主として行なわれており、「ヨーロッパのゲルマン文化系のイギリス文化が、北アメリカ民族の形成に、主流的(ドミナント)な、あるいは決定的な影響をもたらしました。」という結論は動かないであろう。 つまり、 (1)「民族」概念は、たんに生物学的な遺伝を中心とする概念ではない。「言語」「文化」などを含む概念である。 (2) 「2000年」という年数は、しばしば数万年単位でものを考える遺伝人類学にとっては、ほんのみじかい期間にすぎない。しかし、「民族」の形成にあたっては、2000年ぐらいの年数が、しばしば決定的な意味をもつ。 言語のばあいは、二言語間の近さの度合を測定することによって、その二言語が、何百年、何千年前ごろに関係をもっていたかを、大まかには推定できる。しかし、遺伝人類学によったばあいは、二つの人類集団がいつごろ関係をもっていたかを、何百年前や、何千年前というていどのみじかい時間では、推定できないことが多い。 (3)かりに、「イギリスの植民地であったものが独立して、アメリカ合衆国が成立した」という歴史的事実を知らなくても、あるいは、文字による記録などがすべて失われても、アメリカ人が話している言語を分析すれば、イングランドで話されている言語と関係をもつことは、2000年たっても、容易に、しかも確実に証明できる。 言語は、コミュニケーションの道具である。人間の遺伝的諸特徴とは異なり、しばしば、政治的、あるいは人口的に有力な、ある特定の言語が支配的になりやすい。人間の遺伝的諸特徴は、混合しやすいが、言語は、それにくらべれば混合の度合がずっとすくない。有力な言語の源は、遺伝的諸特徴にくらべて、ずっと容易に、ずっと確実にたどれる。 (4)ある特定の言語が、その社会で有力になる主要な理由としては、「政治」と「人口」の二つがあげられる。 南アメリカ、中部アメリカのラテンアメリカでは、メキシコのスペイン語、ブラジルのポルトガル語のように、スペイン語やポルトガル語などが行なわれている。これは、はじめこの地域がスペインやポルトガルの植民地となり、比較的少数のスペイン人やポルトガル人が、「政治的」支配者となった結果にもとづく。 いっぽう、中国は、モンゴル民族のたてた国の元(げん)や、ツングース民族のたてた国の清(しん)の「政治的」支配下にあったことがあった。しかし、言語は、モンゴル語やツングース語になることはなかった。中国民族(漢民族)の「人口」のほうが圧倒的に多く(大まかにいって、モンゴル族やツングース族二、三人に対し、中国民族千人ていどの割合)、かつ、中国民族は、「文化的」に高いものをもっていたからである。 『広辞苑』では、「人種」と「民族」とを、つぎのように説明している。 「人種(race)人間の生物学的な特徴による区分単位。皮膚の色を始め頭髪・身長・頭の形・血液型などの形質を総合して分類される。コーカソイド(類白色人種群)・モンゴロイド(類黄色人種群)・ネグロイド(類黒色人種群)の三大人種群に分類されるが、オーストラロイド(類オーストラリア人種群)・カポイド(コイサン人種群[コイ族=ホッテントットと、サン族=ブッシュマン])を加えた五大分類も行われている。」 「民族(nation)文化の伝統を共有することによって歴史的に形成され、同属意識を持つ人々の集団。文化の中でも特に言語を共有することが重要視され、また宗教や生業形態が民族的な伝統となることも多い」 この本は、おもに、後者の「民族」概念に重点をおいた本である。 この本は、図表、写真も多く、編集がかなり面倒なものであったとみられる。ご多忙のなか、みずから編集にあたっていただいた勉誠出版の岡田林太郎社長に、とくに、厚く御礼を申しあげる。 また、このシリーズの本に、刊行の機会を与えられた池嶋洋次会長をはじめ、お力ぞえいただいた勉誠出版の方々に、深甚の謝意を表する。 2013年8月20日 安 本 美 典 |
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