『古事記』『日本書紀』の語る神武天皇の物語世界は、ワンダーランドである。

解くべき謎に満ち満ちたミステリアスな世界である。

第二次世界大戦中に、神武天皇の物語が、戦争鼓吹のために用いられたからといって、この ようなミステリアスな世界に、研究者が、足をふみいれず、放榔してかえりみないのは、まち がっている。

この号では、年代論に焦点をあて、神武東征伝承を、すこし深く探究してみた。

ほとんど通説ともいえる、いわゆる「辛酉革命説（しんゆうかくめいせつ）」などは、ほんとうに正しいのか?

「一世平均６０年説」のほうが、神武天皇に関係する『日本書紀』の年代をはるかに簡明に説 明しうるようにみえる。