炭素14年代にもとづく年代測定法は、今後、古い時代の年代を知るための中心的な方法に成長して行く可能性がある。
とくに、年輪年代測定法の手のとどかない古い時代の年代を知る方法のなかでは、もっとも信頼性の高い方
法の筆頭にあげられることになるであろう。
それだけに、炭素14年代にもとづく年代測定法の確実な基礎がためは、急務である。
今回、水田稲作の伝来は、従来考えられていた説よりも、およそ500年古くなるか、という炭素14年代法
にもとづく結果が発表された。
韓国の水田稲作の開始の時期と、わが国の水田稲作の開始の時期との食い違いが解消されるなど、新年代に
なるほどうなづける点も数多い。
一方、方法論の基礎についての疑問も残る。
もっとも大きな問題は、欧米で作成された較正曲線(年代補正のために用いられる曲線)を、日本や韓国の
データに、そのまま用いてよいのかという疑問である。この点に十分な検証が行なわれているのか、という疑問である。
較正(補正)された炭素14年代と年輪年代による年代とが、合わないというわが国のデータも示されている。
この点の検討が必要であるとする専門家の意見もある。
湖状をなした日本海のまわりの極東の地の、特殊事情もありうるのではないか。
西暦紀元前300年よりも前の、わが国の年輸年代にもとづく確実な較正曲線は、いまだ提出されていない
ようにみえる。
思わぬ考えおとしは、ありうるものである。
科学や学問の世界では、当然のことのように思えることがらも、一つ一つ検証して行くことが必要である。
「炭素14年代にもとづく年代」については、期待が大きいだけに、声をかけたい。
「好漢自重せよ」と。
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