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第206回 特別講演会特別講師 尾本恵市先生 |
尾本恵市先生の講演
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■ 人類進化モデルの今昔 昔: 一本杉モデル 人類は、猿人、原人、旧人(ホモ・エレクトゥス)、新人(ホモ・サピエンス)と単一の系統で進化する。 現在: 複雑な樹木(?)モデル 進化の過程でさまざまな人種が発生しては絶滅し、最終的にホモ・サピエンスが残って世界中に広がった。 |
尾本恵市先生 自然人類学者 桃山学院大学教授 日文研名誉教授 |
■ 人類の発生地の今昔 昔: 多地域進化論 アジア、アフリカ、ヨーロッパなど世界のそれぞれの場所で、猿人から、旧人、新人に発展した。 ネアンデルタール人は新人の祖先である。 現在: 新人アフリカ起源説 各地の猿人、旧人は滅亡してしまい、アフリカで進化した新人が生き残り、世界中へ広がった。 ネアンデルタール人は滅んでしまたった旧人である。 雪男はネアンデルタール人の末裔かもしれない。(・_・;) |
■ チンパンジーはヒト科
分子人類学による遺伝子の研究で、チンパンジーやゴリラはヒト科に分類するのが現在の定説。 とすると、チンパンジーは一人二人と数えるべきか。(^^;) ヒトは、チンパンジーの赤ちゃんに似ている。 ヒト遺伝子の突然変異で、幼児の形のまま大人になる「幼形成熟」が起きたのでないか。 |
■ アイヌの起源 昔: アイヌは白人である。 ロシアにいた白人が、大陸から追い出されて北海道に逃げ込んだのがアイヌだという説。トルストイの写真に見られる豊かなひげや、立体的な顔立ちなどの特徴が、アイヌ人とそっくりなのがその証拠である。 現在: アイヌはモンゴロイドである。 尾本先生は、アイヌの血液のたんぱく質の多変量解析の結果から、アイヌは明らかにモンゴロイドに含まれると判断した。 |
■ ネグリトとピグミー
フィリピンのネグリトは、背が低く、色が黒く、毛がちじれていることから、アフリカのピグミーが熱帯地方から広がっていったのではないかと見られていた。 ところが、尾本先生が、23の遺伝子について調査した結果、2万年前のスンダランドのころからの、東南アジアの古い先住民族でありことがわかった。ホルモンに関連する遺伝子のひとつが違うため、思春期に背が伸びず、子供の時のままで大人になってしまう。ピグミーも、ネグリトとは別の遺伝子が原因であるが、やはり同じように背が伸びない。 『魏志倭人伝』の侏儒国はフィリピンのネグリトのことである。・・・尾本先生の新説? |
■ 縄文人と弥生人
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■ 分子人類学の貢献
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安本先生の解説 考古学データで示す『魏志倭人伝』の世界
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■『魏志倭人伝』記載の遺物は九州からの出土が圧倒的に多い。 邪馬台国問題は『魏志倭人伝』が出発点である。 『魏志倭人伝』に記載されていて、直接的、考古学的に検証できるものは、圧倒的に九州からの出土が多い。 たとえば、『魏志倭人伝』には、倭人は鉄の鏃(やじり)を使うことが記されている。『弥生時代鉄器総覧』(広島大学文学部考古学教室刊 川越哲志編)によれば、「福岡県から奈良県のおよそ百倍の鉄の鏃が出土している。」 |
鉄の鏃の出土データ
九州のほうが、畿内よりも、圧倒的に多く出土する。
鏃以外の遺物についても表に示すように、九州からの出土が多く近畿地方が少ない、西高東低の傾向は、おなじである。 畿内説の考古学者たちが、このような事実に目をつぶり、土器など、倭人伝に書かれていないことを強調して、邪馬台国の議論をおかしくしているのは非常に問題である。 |
福岡県と奈良県の比較
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■三角縁神獣鏡は古墳時代の鏡 中国の学者たちは、日本でしか出土しない三角縁神獣鏡は、日本国内で作られたものであり、邪馬台国が魏や晋から獲得した鏡は、位至三公鏡や内向花文鏡などであるとのべる。 卑弥呼たちが手に入れた鏡は、当時、中国北方で流行した10種類ほどの鏡と推定され、日本でのこれらの鏡の出土状況を見ると、鉄の鏃などと同じように西高東低の傾向を示している。 |
いっぽう、三角縁神獣鏡は、近畿地方を中心として分布し、前方後円墳から出土することが多い。三角縁神獣鏡と、前方後円墳の分布状況はとても似ている。 三角縁神獣鏡の分布は、鉄の鏃など倭人伝記載の出土品とは明らかに異なっており、 倭人伝とは違う世界の遺物と考えるべきである。 |
前方後円墳(100m以上)の分布 近畿地方を中心に、東海、関東にも広がる。福岡、宮崎や、岡山にも相当数分布している。 | |
三角縁神獣鏡の分布
近畿地方を中心にして広がるようすは、前方後円墳の分布とそっくりである。 前方後円墳は、大和朝廷の成立発展とともに、数を増やし、規模を大きくしていった。 三角縁神獣鏡も、古墳時代の大和朝廷の祭器として、前方後円墳と共に数を増していったと考えるのが妥当ではないか。 |
■危ない考古学者たち 邪馬台国問題は、考古学的な事実をきちんと見ることによって、もっと、容易に方向が明確になると思われるが、考古学者が、考古学的な事実も無視する傾向が目立ちはじめている。権威主義にとりつかれて、自分の頭で判断しない、危ない考古学者が増殖しているようだ。 旧石器捏造問題に関連して、法政大学笹川孝一教授は次のように述べる。 「権威主義的『学習』観からの解放と生涯学習の役割」より |
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